酸敗嗉嚢(発酵性嗉嚢炎)
概要
嗉嚢内容物のうっ滞と細菌(大腸菌、クロストリジウム)・酵母(カンジダ)異常増殖による発酵で、嗉嚢の膨満、悪臭、吐き戻しを生じる。挿し餌中の雛、衰弱鳥、嗉嚢の運動障害をきたす基礎疾患を持つ鳥に多い。
主な症状
原因
嗉嚢のうっ滞が原因。誘因: 冷たいフォーミュラ・不適切な温度や粘度での挿し餌、過剰給餌、低体温(冷えた雛)、全身性疾患(PDD、重金属中毒、敗血症)、異物、嗉嚢熱傷、腫瘍。これにより細菌(大腸菌、クロストリジウム)と酵母(カンジダ)の異常増殖と発酵が起こる。リスク因子: 若齢・衰弱鳥、近年の抗生物質投与(カンジダ症を誘発)、ストレス、免疫抑制。
病態生理
嗉嚢の運動機能障害により食物が停滞し、嫌気性かつ温かい細菌・酵母増殖に適した環境が形成される。発酵によりガス産生(嗉嚢膨満)、有機酸産生(悪臭)、炎症性副産物が生じ、嗉嚢機能をさらに障害する。酵母(特にCandida albicans)は抗生物質による正常細菌叢の破綻後に日和見的に増殖する。未治療では嗉嚢炎、食道炎、吐き戻しによる誤嚥性肺炎に至る。
治療
(1) 嗉嚢洗浄: 温生理食塩水(38-39℃)でゆっくり洗浄、内容物を完全に排出。(2) 完全に空にしてから再給餌を再開。(3) 基礎原因の特定と対処: 低体温の雛を38-39℃に保温、給餌技術の修正。(4) 抗真菌薬: ナイスタチン 300,000 IU/kg PO q12h × 7-14日(カンジダ) — 酸敗嗉嚢の第一選択。重症例にはフルコナゾール 5-10 mg/kg PO q24h。(5) 細菌性が示唆されればアモキシシリン/クラブラン酸 125 mg/kg PO q12h、または培養感受性試験に基づく抗生物質。(6) 支持療法: 温輸液(皮下)、消化の良い食事(少量から段階的再給餌)、プロバイオティクス(Lactobacillus等)。(7) コルチコステロイドは避ける(カンジダ増悪)。(8) 誤嚥性肺炎の監視。(9) 慢性再発例の精査: PDD(pp7免疫組織化学)、重金属中毒(亜鉛・鉛測定)、腫瘍の鑑別。(10) 嗉嚢マッサージ(軽い圧迫)— 排出促進に有用な場合あり。(11) Carpenter Exotic Animal Formulary 6th ed 推奨用量に準拠。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • MSM+アミノコンプリート (MSM+必須アミノ酸(BCAA中心)): 組織修復・筋肉維持・肝腎栄養サポート • カミデミルク (消化吸収しやすい流動性栄養): 食欲不振・クリティカルケア・経管栄養 ※MSM+アミノコンプリート: 重度肝・腎不全は蛋白負荷に留意 ※カミデミルク: 完全腸閉塞は禁忌; 重症膵炎は低脂肪配合
予防
適切な挿し餌技術: フォーミュラ温度38-39℃、適切な粘度、給餌間で嗉嚢を空にする。雛の環境温度維持(離乳後 28-32℃、無羽の雛はより高温)。長期・不必要な抗生物質使用を避ける。給餌器具の衛生管理。基礎疾患の早期検索と治療。
予後
迅速な治療と基礎原因の対処で予後良好。素因が改善されないと再発が一般的。重度・慢性例では嗉嚢炎、線維化、誤嚥性肺炎を合併する可能性。未治療例(特に雛)では24-48時間以内に致死的となる。
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