寄生虫性皮膚炎
概要
寄生虫性皮膚炎は、原虫性外部寄生虫(水生ステージでのトリコディナ、イクチオボド/コスティア、エピスティリス、ボルティセラ、ウーディニウム)、損傷皮膚上の繊毛虫・鞭毛虫の過剰増殖、または皮膚を貫通・移行する後生動物ステージ(吸虫セルカリア、皮膚から侵入するRhabdias幼虫)によって起こる両生類外皮の炎症である。両生類の皮膚は呼吸・浸透圧調節器官であるため、表在性の寄生であっても全身状態が損なわれる:過剰粘液・刺激・表皮損傷がガス交換と電解質バランスを障害する。野生捕獲個体、過密・不衛生な水槽、飼育不良で免疫低下した個体で多い。
主な症状
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臨床徴候
過剰粘液(皮膚の白濁・ぬめり)、斑状の発赤、刺激行動(基質へのこすりつけ・落ち着きのなさ)、ウーディニウム寄生での灰白色被膜、限局性のびらん・皮膚剥離、元気消失、食欲不振、体重減少。幼生では高密度のトリコディナ寄生が高い罹病率を引き起こす。
原因
原虫性外部寄生虫(トリコディナ、イクチオボド/コスティア、エピスティリス、ボルティセラ、ウーディニウム)、水生巻貝から遊出する吸虫セルカリア、経皮移行する線虫幼虫(Rhabdias)。素因:水質不良(高有機物負荷)、過密飼育、低温ストレス、野生捕獲由来、併発する免疫抑制性疾患。
病態生理
外部寄生虫は表皮に付着・摂食して角化細胞を機械的に損傷し、粘液の過剰分泌を刺激する。両生類の表皮は皮膚呼吸と能動的イオン輸送を担うため、粘液の被覆と表皮びらんは酸素取り込みを低下させ、ナトリウム/塩化物の喪失、脱水、酸塩基平衡異常を引き起こす。固着性繊毛虫(エピスティリス)の高度定着は有機物過多の水質を示し、しばしば二次性細菌感染に重なる。ウーディニウムの栄養体は宿主細胞を直接破壊する。寄生虫の経皮移行は皮膚バリアを破綻させ細菌を接種し、未治療では潰瘍性皮膚炎や敗血症へ進行する。
診断
皮膚スクレープまたは粘液のウェットマウントを直ちに鏡検する(運動性の繊毛虫・鞭毛虫は速やかに死滅する)。トリコディナ(回転する円盤状)、イクチオボド(明滅する鞭毛虫)、固着性繊毛虫(エピスティリス/ボルティセラの柄)、ウーディニウム(色素性球体)を同定する。併発する内部寄生(Rhabdias)のため糞便検査を行う。必ず水質(アンモニア・亜硝酸・pH・水温)を評価する — 原虫の増殖は通常、有機物負荷や宿主の免疫低下に続発する。
治療
(1)まず飼育環境の是正:全換水または清浄な水槽への移動、飼育密度の低減、種の至適温度への調整、有機物残渣の除去 — 水質不良のままでは原虫性皮膚炎はほとんど治癒しない。(2)塩分耐性のある水生種への塩浴:4-6 g/L(0.4-0.6%)の両生類リンゲル緩衝塩浴を1日5-30分×3-5日(種依存;塩感受性種と幼生では回避 — 低濃度から開始し観察)。(3)海水由来ウーディニウムには耐性種で蒸留水/脱イオン水浴2-3時間(浸透圧的殺滅)。(4)幼生にはより穏和な抗原虫処置としてメチレンブルー 2 mg/L 薬浴。(5)難治性トリコディナ/コスティアにはホルマリン浴(0.15-0.25 mL/Lを10分 q48h)の記載があるが両生類では安全域が狭い — 獣医師管理下の重症例に限る。(6)皮膚の吸虫セルカリアやRhabdias皮膚移行には:プラジクアンテル 8-24 mg/kg 局所/PO q14d(吸虫)またはフェンベンダゾール 100 mg/kg PO q14d反復(線虫)、加えて中間宿主(巻貝)の水槽からの除去。(7)支持療法:浸透圧支持のための両生類リンゲル浸漬、食欲不振時の強制給餌、必要に応じ二次性細菌性皮膚炎の治療(希釈エンロフロキサシン薬浴または局所スルファジアジン銀)。(参考文献:Wright & Whitaker, Amphibian Medicine and Captive Husbandry;Mader's Reptile and Amphibian Medicine 3rd ed;Densmore & Green 2007 ILAR J)
予防
新規個体はすべて30-60日検疫し、搬入時・検疫解除時に皮膚ウェットマウントを実施する。水質維持(定期的な部分換水・生物濾過・残餌除去)、適切な飼育密度と水温、飼育環境からの水生巻貝(吸虫中間宿主)の排除、水槽間でのネット・器具の消毒。早期発見の監視対象:粘液増加・皮膚発赤・こすりつけ行動・食欲低下。
予後
早期治療と飼育環境の是正により良好 — 水質が回復すれば原虫性皮膚炎は通常1-2週で消退する。トリコディナ高度寄生の幼生、広範な表皮剥離(浸透圧調節不全)を伴う個体、免疫低下の基礎要因が持続する場合は要注意。治療反応の指標として粘液分泌・皮膚発赤・食欲を監視する。
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